非常識な経営

みなさんに質問です。
下記のような会社で働いてみたいと思われますか。

1.就職人気ランキングには1度も入ったことがない。
2.ライバル企業には外資系が多く競争が厳しい。
3.仕事は忙しく、給料は高くない。
4.給与体系は、年功型。成果主義は行わない。
5.会議はだらだらと長い。4時間の会議は短い方。
  週末を利用して年間30回は開催される。
6.選択と集中はしない。何でもやる。

今やビジネスの世界では常識となっている
グローバルスタンダードというものさしではかると
とても非常識な会社でしょ。

でも、この会社、一部上場の成長企業なんですよ。
96年6月期に897億円だった連結売上高は
2007年6月期に2392億円と3倍近くに増え、
連結経常利益は35億円から161億円へ
5倍近い伸びを達成しています。

さて、この企業はどこでしょうか。
実は、デイリーアイでも何度か取り上げた
アルバックなのです。

非常識経営を標榜するアルバックを見ていると
かの アインシュタインの
こんな格言を思い出します。

「常識とは18歳までに身につけた
偏見のコレクションのことをいう。」

実際、アルバックは大変優秀な企業であり、
また、働きやすい企業でもあるようです。

アルバックでは、
年間に120人程度の新卒を採用していますが、
1年間に1人か2人しか辞めないという
驚くべき離職率を誇っています。

ちなみに、昨今の新卒社員の離職率は、
3年で3割というのが常識だそうですよ。

ではなぜ、アルバックの離職率はこんなに低いのでしょうか。

実は、若手社員のやる気を引き起こす風土が、
脈々と築かれてきたからなのです。

「ダラダラ会議」もその1つ。
月に2〜3回、週末を利用して開かれる
「戦略研究会」には、
関係する幹部は全員、
希望する社員は自由に参加できます。

戦略研究会は自由討論の場なので、
結論を出す必要はありません。
会長から一般社員まで平等な立場で参加します。
主なルールは3つ。
1.怒ってはいけない。
2.根に持たない。
3.自分のことは棚に上げてよい。

「若手社員が発言しても見下したりしないで、
ちゃんと話を聞いてくれる。
しかもトップが自分の提案に対して
本音で意見を言ってくれる。」
というのが新卒社員の声です。

さらに、若手の声を聞くだけではなく、
やりたいと手を挙げるテーマを
やめろとは絶対に言わず、
100%承認してくれます。
これが、「選択と集中はしない」の真髄。

この話を聞いて思い出したのが、
「ビジョナリー・カンパニー」(日経BP社)の
「意図的な偶然」という言葉です。
「大量のものを試し、うまくいったものを残す」
ことによって、
意図せぬ進化や突然変異が起こります。
これが生き残りのための知恵であるというのです。

東工大教授の本川達雄氏が3年くらい前の
日経のコラムで述べていたのですが、
「生物は固有の時間を持つ。
小動物は進化が速く短命。
大型動物は長命だが環境変化に弱い。
このルールは会社にもあてはまると思う。」

このルールに従えば、
小企業は短命を克服するために知恵を働かせ、
様々なことに挑戦する。
一方、大企業は、なんとか若返り、
環境に適応しようと必死になる。

アルバックが身を置くのは、
先端技術という大変、変化が激しいビジネス分野です。
最近では、ソニー、松下、日立などのハイテク企業が、
大型動物化して、
環境に適応できにくくなってきていますが、
変化が激しい業界ほど、
小動物の敏捷性が必要になります。

そのような観点から考えてみると、
アルバックは、
一見、非効率な企業経営をしているようですが、
実は、ハイテク分野には
大変適した経営方法なのかもしれません。

「ダラダラ会議」による徹底した議論を通じて、
会社合意の下で経営の方向性を決めているので、
エネルギーのベクトルがあちこちに向き、
分散されることがないので、
革新的な新技術をを生みやすい。

また、年功型の賃金で、
給与の格差はつきにくいけれど、
失敗しても給与が下がらないから
社員は安心して新しい技術に挑戦できる。

なかなか、合理的な経営ですよね。

バブル崩壊と共に、
間接金融システムによる日本型経営が、
完全否定され、いつの間にか、
グローバルスタンダートの名の下に、
アメリカ型の効率経営にとって替わられましたが、
アルバックのような成功企業を見ていると、
日本人にあった企業統治の方法が他にあるはずだし、
これから生き残っていくためには、
その方法を模索する必要があるではと思うのです。

効率経営オンリーでは、
多くの日本の会社員は疲弊してしまいます。

(2008/3/3 記)