「目立たなくても良い会社」を目指す隣社長

「太陽電池」(1月8日)で取り上げたエヌ・ピーシー、
調べれば調べるほどおもしろい会社です。

社長の隣良郎(ちかき よしろう)氏は、
なかなかの苦労人です。

1983年大阪大学工学部卒業後、
伊藤萬(現・住金物産)に就職。
生涯、伊藤萬に務めて、
取締役になるという夢を持っていましたが、
経営悪化により1992年に退職。
知人の紹介で日本ポリセロ工業という
真空製造装置メーカーに就職しますが、
ほどなく、財務がボロボロで
つぶれかけていることを知ります。

「なんとか暖簾だけでも残してほしい」という
前経営者からの依頼を受けて、
伊藤萬の同僚と共に
日本ポリセロの営業権と債務を承継し、
新会社エヌ・ピー・シーを立ち上げました。

商社マンの時代から
破綻する数多くの中小企業の姿を見てきた
隣氏にとって、経営者になることは、
かなりの重圧があったそうです。
会社が10年存続する確立は、
わずかに5%といいます。
「会社をつぶさない」ということは、
それだけ困難な作業であるからこそ、
会社をつぶさないことこそが、
隣社長の経営の原点なのです。

日経のインタービュー記事によると、
隣社長は、経営は冒険やギャンブルではないので、
5分5分の可能性では決して動かず、
9割の勝算が見えるまで、
慎重でゆっくりとした経営を心がけているそうです。

もともとは、すぐに前のめりになって
突っ走ってしまう性格なので、
自らを戒める意味もこめて、
創業当初から、取締役会での決定は、
全員一致が原則としています。

成長軌道に乗ったきっかけは、
大手電機会社から真空機の注文が
増加したことにありました。
なぜ真空機が売れているのかを調べてみたところ、
太陽電池のパネル製造に利用していることが分り、
1994年に太陽電池製造装置事業に参入したのです。

参入当初は国内外に競合がほとんどおらず、
パイオニアとして自由に市場を開拓し、
先行者メリットを享受しました。
そのおかげで、現在、
国内外の太陽電池メーカー約200社のうち、
約120社にエヌ・ピー・シーの装置を納入しています。

つぶさない経営を標榜するだけのことはあり、
リスクの高い手法には一切手を出しません。
取引先も1社に偏らないように
営業活動を行っています。

エヌ・ピー・シーの強みは、
モジュール工程において必要なすべての装置を
自社装置の一貫ラインとして
提供できる唯一の企業であることです。

ちなみにモジュール製造に必要な工程は4つ。
その4つの工程に必要な装置は以下の通り。

■セルテスター■
太陽電池セルの出力特性を検査する。

■セル自動配線装置■
セルの電極に配線して複数のセルをつなぎ合わせる。

■真空ラミネーター■
つなぎ合わせたセルをパネル化するためのガラス、
封止材、保護シートを積み重ねて真空下で加熱、
プレスしてパネル化する。

■モジュールテスター■
最後に完成したパネルの出力検査を行う。

4つの装置をそれぞれ単体で
製造するメーカーは数多く存在しますが、
すべてを提供できるのは
エヌ・ピー・シーだけなのです。

世界的な起業家表彰制度である
「アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー」
の日本代表に選ばれた経緯を持つ
起業家であるにもかかわらず、
地に足をつけてじっくり、じっくり前進していく
隣社長の目指すところは、
「目立たなくても良い会社」を作ること。
とても、好感が持てます。

(2008/2/28 記)